黒い花

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「庵さんの携帯でよろしいでしょうかー?」 なおも無機質な声で返答を求めてくる。 「はい…庵ですけど…なんで僕の携帯番号わかって…」 「一度電話いただきましたよねー。」 「えっ…」 「連絡いただいた電話番号に、こうしてかけ直してるんです。」 「いや、僕はかけてません…」 「あれ?でも履歴が残ってるんですけど…」 「…僕はかけてません。」 「…おかしいですね…アルバイトの面接の件でご連絡いただいたんですよね。」 「…」 「…チラシをご覧頂いて…」 僕は段々と言い返すのも面倒になってきていた。 「…はい。」 「良かった。では面接の日にちなんですが…」 「…はい。」 僕は話を合わせることにした。 「明日の午後5時に店まできていただけますか。」 「店…えっと…店ってどこにあるんですか?」 「駅まで来ていただければ迎えをよこします。」 「あの…どういった仕事なんですか?」 「…どういったとは?」 「スーパー…なんですか?」 「…そういった事には答えられない事になってまして…」 「…わかりました。」 なんとも怪しい応対するこの女が、僕の神経を逆なでする様に耳に突き刺さる。 「では庵さん、明日お待ちしてますね。」 「…はい。」 そこで電話は切られた。 僕はまだ鼓動が治まっていない事に気付きフーッとため息をついた。
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