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まだなお出し惜しみしようとしているアキラに僕はため息をついた。
「話すのか?話さないのか?」
「わかったよ話すよ。…実はタクちゃんが運ばれてきたとき付き添いの人がいたんだってよ。」
「付き添い?両親か?」
「いや、若い女性だったらしい。」
「…彼女かな?」
「タクちゃんも隅に置けないよな。恋愛なんて似合わない様な生活してそうなのにな。」
「ほんとだよな…」
「あーそれからお前このことは秘密だからな。」
「何でだよ…」
「皆が知らない情報を持ってることで優越感を楽しむのだ。」
「なんだそりゃ…」
「あーダメだ!タクちゃんの顔を思い出すと涙がでてくる…」
アキラはパンパンと顔を叩いた。
段々と雨足が激しくなっていく。
「はーい!みんなバスに乗ったー!」
教頭の大きな声が中庭に響きわたってきた。
クラスメートたちはゾロゾロとバスに乗り込んでいく。
僕とアキラは一番後ろの席に並んで座っていた。
バスは学校を出て一路、タクちゃんの家へと走り出す。
バスの中ではクラスメートたちが思い思いにタクちゃんの思い出話に花を咲かせていた。
だが僕とアキラは何も話さなかった。
タクちゃんが死んだのがまだ自覚できずにいる自分がいた。
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