14人が本棚に入れています
本棚に追加
走り込んだ教室はいつにも増して賑やかだった。
黒板には大きな文字で自習と書かれそのまわりには落書きでヤッターだの人の絵だのが書かれている。
「ラッキー…」
僕は小さくガッツポーズした。
「なあなあ庵(いおり)、なんで遅れたんだよ。」
馴れ馴れしく話しかけてきたのはクラスメートのアキラだった。
「張り紙みてたんだよ、アルバイトの。それより今日タクちゃん休みか?」
タクちゃんと言うのは担任のあだ名だった。
「それがよ、タクちゃん昨日交通事故に巻き込まれたんだってよ。噂じゃ今も意識不明の重体らしいぜ。」
「だれの噂話だよ。またホラじゃないのか?」
「さっきカオリたちが言ってたんだよ。な、あいつらの噂話だったら信用できるだろ?」
「どうだかな…」
僕は鞄から一冊のノートを取り出した。
「庵、また小説書くのか?才能ないんだから諦めろって言っただろ?」
「…」
僕はアキラの戯れ言に無視という形で反論した。
「なんだ、無視かよ。へいへいお邪魔虫は消えますよ。」
アキラはスゴスゴと他のクラスメートの所へと消えて行った。
僕は周りの喧騒にひきづられないように自分の世界へと入っていく。
だんだんと周りの声が遠のいていくのをまるで他人事のように見つめている自分がいた。
最初のコメントを投稿しよう!