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家への帰り道、僕は朝見つけた電信柱の前にボーと突っ立っていた。
「なんだよ、これ…」
見ると朝貼られていた張り紙が無くなっており、変わりに聞いたこともないローン会社の広告が同じ位置に貼られていた。
その張り紙は所々破れたり汚れたりしており昔からそこにあったかのような体を醸し出している。
「張り替えられたのか?」
僕はその張り紙の一辺を人差し指で引っ掻いた。
張り紙は容易く破れたがその下からは電信柱の無機質なセメントが現れるだけだった。
「朝まであったのに…」
僕は暗い天に向かって突っ立っている電信柱を見つめるでもなくその前に立ち尽くしていた。
「そうだ…電話番号…」
僕は携帯を取り出すと電話帳機能で朝入れたはずの番号を検索する。
「スーパー…カカシ。」
無機質に点灯するその名前を僕は読み上げる。
その番号は確かに携帯に入っていた。
「どうしよう…電話しようかな。」
僕は右手の親指を通話ボタンにかける。
しかし僕の感情の何かがボタンを押すことを躊躇わせていた。
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