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強い雨足の中、傘をさしながら駅への大通りを歩いていた。
今日は午後からテスト休みの為学校終わりでアルバイト先に向かう。
駅を正面に見て左の細い路地へと入っていく。
薄暗い路地に僕は慣れることなくまだ緊張していた。
誰ともすれ違わないまま、会社の入った薄汚れたビルへとたどり着く。
老築化が進んでいるのかまわりのビルよりも古く見えていた。
ガチャリと鉄の重い扉を開く。
中を見ると階段はどこからか水が侵入しておりビチャビチャに濡れて蛍光灯の光を反射してギラギラと輝いて見える。
僕は爪先立ちになり一歩一歩階段を登っていった。
二階の踊場にたどり着いた時だった。
カイサイローンの看板がかけられた部屋のドアの隙間から水が染み出してきていた。
「雨漏りしてるんじゃ…」
僕は階段を登りながら後ろを振り返る。
潰れて誰もいないはずの部屋からは何かいるような不気味な気配を感じていた。
僕はしばらくの間二階のその部屋を注視する。
誰もいないはずの真っ暗な磨り硝子に少しの気配を感じていた。
まるで闇にじっと見つめてられているような感覚を覚えて背中に冷たい物を感じる。
僕は前に向き直ると一段飛ばしで階段を駆け上がっていった。
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