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その日の晩、僕は布団の中である夢を見た。
真っ暗な空間で手探りで何かを探している。
あり得ないほどの静寂の中痛いほどの耳鳴りが響いている。
広いのか狭いのか、ましてや丸いのか四角いのか、右も左も何も分からないまま僕は前とおぼしき場所へ歩を進めていく。
足元すら見えない僕は前方から微かに聞こえてくるアカチャンの鳴き声を頼りに進んでいた。
目が慣れてきて数歩先に裸で転がっているアカチャンらしき物体が目に入ってきた。
段々と耳に入ってくる泣き声がその大きさを増していく。
そのアカチャンは顔にタオルが掛けられていた。
「それで泣いているんだね…今取ってあげるよ。」
僕は呟きながら1メートルほど先のアカチャンに近づいて行った。
しかし闇は重力を帯びており思うように足が動かない。
ズブズブとまるで沼のように足に絡み付いていた。
「くそ…もう少しなのに…」
呟きながら宙を泳ぐように歩を進めていく。
少しづつながらアカチャンに近づいていった。
闇に足を取られながら僕はアカチャンの顔に掛けられたタオルに手を伸ばす。
「あと…ちょっと…」
僕は無理矢理に手を伸ばした。
そしてタオルに手がかかった時だった。
アカチャンが泣き止んでこちらを見た。
「…」
タオルが外れたその顔は少し笑ったタクちゃんだった…
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