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「悔しいておま……」
「兄さん。お姉ちゃんの言うことは気にせず私で最後にしてください。じゃないと私も悔しいので。」
「冬河、お前まで……ハァ、それ言い始めたらキリねぇだろ。んじゃもう終わり!これ以上は何言ってももうやらん。」
「えー!?……もぅ、冬河のせいでお兄ちゃん怒っちゃったじゃない!」
「お姉ちゃんが先に言い出したんじゃないですか。それを私のせいにするとか、まさに外道ですね!」
「あ゙ーもううるせぇな!?どっちもどっちだよ!10回もやらされて若干指の感覚が無くなっきてんだかんな!!」
ギャーギャー言い争っている二人に怒鳴ると、二人はシュンとちっちゃくなって黙り込む。……俺は悪くないからな。今回の俺は何も悪くない。
「……にしても遅いな秋姉。もう一時間は経つぞ?」
二人が静かになったところで、俺は部屋の壁に掛けられた時計を見上げる。時刻は19時半。秋姉が本当に幽霊退治に行ってからもう一時間が経とうとしていた。
「……どうしたんだろ?もしかして幽霊相手じゃやっぱり……」
「…………ちょっと見てくる。」
「え?お兄ちゃん……?」
「秋姉の様子を見てくる。安心しろ。危険だったらすぐに戻ってくるから。」
「で、でも……!」
「でもでもなんでもだ。すぐに戻るから……だから待ってろよ?」
俺はそう言い残して、夏紀と冬河の制止を振りきると急いで例の通路へと向かった。
通路のあるフロアに来ると、まだたくさんの人の姿が見えた。俺は目当ての通路を見つけるとすぐ側まで寄って……チラリと覗く。
通路は相変わらず薄暗く、なんでこんな通路がここに?と疑いたくなるほどだ。奥は見えない。とうとう蛍光灯が切れたらしい。
「……秋姉?」
一応通路の奥へと声を掛けてみるが……返事は返ってこない。当たり前だ。むしろ今ので返ってきたら逃げ出してたわ。
……まさかテープを潜って奥行ったわけじゃねぇよな?まだこんなに人がいるんだし……どうしよう?突っ込むか?いや、無理か。
俺は通路を覗き込みながらう~んと唸っていると、突然肩をトントンと叩かれて反射的に顔をそっちに向ける。そこには接客係の人が不思議そうな顔をして立っていた。
「あの……どうかしたの?この奥が気になる?」
「え……あ、えっと…………は、はい。この奥って何があるんですか?」
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