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「……この奥は使われなくなったボイラー室なんだ。今は新しいボイラー室が出来たから、この奥へは立ち入り禁止にしてるんだよ。」
「ボイラー……室ですか。あの、すごく失礼なことをお聞きしますけど、この奥のボイラー室で誰か亡くなったりとかは?」
「…………実は君の言う通りなんだよね。だから新しいボイラー室を作ったんだ。」
「……何があったんです?」
「……たしか5年ぐらい前かなぁ。一人の女性作業員がボイラーの点検作業をしてたらしいんだけど、点検終わって出ようとしたらドアが壊れたらしくてね。出られなくなってそのまま誰にも気付かれずに閉じ込められて亡くなったらしい。」
「閉じ込め!?そんなことが?」
「……信じられないだろうけどあったんだよねこれが。まぁ私は話を聞いただけだから何とも言えないけど。それで……君は何してたの?」
「……うちの姉がもしかしたらこの奥にいるかもしれないんです。」
「お姉さんが?でも立ち入り禁止のテープが張ってあるし、まだたくさん人もいるから気付かないってことはないと思うけど。」
接客係の人はそう言ったが、俺はふとあることを思い出す。そうだ……秋姉は生けるバグだったのを忘れてた。気配を消すことなど朝飯前だろう。
どうしよう……行くべきか?いや、俺が行っても役に立たないだろうし、やっぱ信じて待ってた方がいいかな?でも一時間経っても帰って来ないんだから何かあったのかも……
頭の中でグルグルと不安だけがよぎる。そうして俺の出した結論は……
「……すいません。ちょっとだけでいいのでこの奥行かせてもらえませんか?」
「いや、流石にそれは……」
「お願いします!ホントにちょっとなので!!」
「…………じゃ、じゃあ本当にちょっとだけだよ?お姉さんがいなかったらすぐに戻ること。分かった?」
「……はい。そのつもりです。」
まぁ様子を見るくらいなら……俺はそう決めてテープを潜る。通路の奥はまるで深淵。吸い込まれて二度と帰ってこれないんじゃないか?という思う程の雰囲気が漂っている。
「……秋姉。無事だよな?」
俺は静かに呟くと、一歩を踏み出す。また一歩。そして……三歩目を踏み出した次の瞬間。突然周りの空間が歪み……気が付けば目の前にボロボロの秋姉と、霊力が300GPはあると言われていた幽霊が対峙をしていた。
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