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母さんが死んだ。
死因は事故死。他の車に運転席側から衝突されて即死したらしい。その時の俺は高校二年。とりあえず意味が分からなかった。
だって突然日常が壊れてスンナリ受け入れられる奴なんて……いないって断言は出来ないが、9割ぐらいは出来ないだろうと思う。俺は勿論その9割の一人だった。
だけど目の前に置かれた棺桶を見つめて俺は理解した。この状況を。この有り様を。
(あぁ……現実なんだ。もうあの五月蝿い声を、無邪気な笑顔を見ることも聞くこともない。母さんは……死んでしまったんだな。)
火葬された母さんの骨を入れた骨壺を持って外に出ると、俺達と同じように今日大切な人を失ったのであろう家族を見つけた。俺は暫くその家族を見つめていると、向こうもこっちに気付いたのか視線をこちらに向けてくる。
見たところその家族は全員が女性のようで、俺を見つめてきている子は腰まで垂れているポニーテールがよく似合っている巨乳の子ですた。まさかこんなところであんなものがお目にかかれるとは……
ハッ、いかんいかん。あまりにも漫画じみたプロポーションだったからつい見とれてしまった。母さんが死んだってのに何をやってるんだ俺は……
彼女は暫く見つめてきた後、家族に呼ばれたからか急いで戻って行ってしまった。……はぁ、あんな妹が欲しいもんだ。
「和樹。そろそろ帰るぞ?」
「あ、うん。分かったすぐ行く。」
親父に呼ばれて車の方に向かう途中で、クールビューティーといった感じの子とお姉さんタイプの女性二人がこちらを見ているのに気付いたが、俺は見つめ合うこともなく車に乗り込んだ。
……あの二人もさっきの家族の人だと気付くのはもう少し後である。
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