海月

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 やがて青年の笑い声が止むと、どちらともなく唇を重ねた。  青年の息の温度が上がり、(つゆ)を含んだように潤む。熱い首筋から頬にかけて撫で上げると、鼻に掛かった甘ったるい(あえ)ぎが漏れた。 「っ……そう言えばっ。あの人は、どうしたんだ? いつもはいいタイミングで邪魔しに来るだろ!?」  再び真っ赤になり、猛然と男の顔を押し戻しながら、青年はあらぬ方へ目を(そら)らす。  男は一旦身を引き、楽しげに扇で顔を(あお)ぎながら、漆黒の毛並みを持つ猫へと姿を変える、同居人の姿を思い浮かべた。 「彼女、最近はあちらへ入り浸りなんすよ。美味しい餌をくれる人でも見付けたんすかね」 「あっちじゃ人の姿で居る方が多いんだろ? 第一そんな事言ってると鉄鎚(てっつい)(くだ)るぜ」 「まあまあ、そんな事は脇に置いといて。もう一試合、どうっすか」 「あんた絶対、一回じゃ済まないだろっ! ほら、ガキ共も帰って来るんじゃねーか?」  往生際悪く抵抗する青年の腰を抱き寄せて手を掴み、耳朶(じだ)に触れそうな程唇を寄せ、低く優しく囁く。 「愛してますよ」 「うっ……ずりぃ。――ああ、もうっ。分かったよっ」  青年は負けを認めるように、男の首に両腕を回ししがみついた。  触れ合った胸の鼓動が、互いの高まりを伝える。  嘘吐きな口より、身体の方が余程正直だった。
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