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「……な……何だよ……そりゃあよ……?」
今までの威勢は影を潜め、真っ赤だった男の顔がみるみるうちに青くなっていく。自分達の銃をまるで小型拳銃の如く見せるリボルバーを、この大男に突き付けられた時の反応は皆往々にして同じだ。
「んだぁ? 知らねぇのか。コイツはS&WのM460XVR。史上最速、.45口径最強のリボルバー。俺の自慢の相棒よ」
僅かに嬉々として説明する大男。だが、それを向けられている方の耳には全く入っている様子はない。そもそも男もそんな事を尋ねた訳ではないだろう。蒼白になった顔がそれを物語っている。
「さて兄ちゃんどうする?コイツとやり合うか?」
カチャリ……と、わざとらしくハンマーを起こす。これが決定打となった。
「ヒ……ヒイィィ!!」
脚をもつれさせ形振り構わず逃げ出そうとする背中に低い声が投げかけられる。
「待て」
錯乱した人間すら凍り付かせる声。その声で男に更に告げる。
「ガンと財布は置いてけ」
言われるや否や一転して慌ただしく財布を探し、一刻も早く手放したいとばかりに地面に置いた。それを確認し、絶対の命令を下す。
「よし……失せろ」
「は……はひ……ハヒィィィ!!」
命令通り男は一目散に逃げ出した。そしてただ一人――その辺でノビているのも居るが――残された大男は、地面に置かれた銃と財布を拾い上げ、陰気な裏通りを後にした。
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