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俺は騒ぎの発端となった男を見る。
40代半ばだろうか?背は低めだが筋肉の量が凄まじい。
テレビで見たK-1の選手のようなゴツゴツとした所謂戦う為の体のようだ。
あんなのに殴られたら俺なんて1発なんだろうな…などと嫌な考えが浮かび頭を振って散らすことにする。
男達は緊張した面持ちで森を見つめている。
俺も男達が見つめる先に視線を向けるが、特に変わった様子は見当たらない。
強いて言うなら森のあちこちに赤い小さな光が多数見える程度である。
赤い小さな光?
男達は無言で森を見つめている。
俺は赤い光の正体を見ようと目を凝らす。
赤い光は僅か動きながら此方に近づいてきている、更に目を凝らすとおぼろげながら輪郭が見えてきた。
熊……?
鹿……?
見えてきたのは見た感じ熊っぽいのだが、角が生えている。
しかも、熊っぽいと云うだけで明らかに俺の知っている熊ではない。
便宜上あれは熊鹿と呼ぼう。
熊鹿の群れはジリジリと男達に向かい距離を狭めている。
見える限り数は6匹、男達は20人以上。
数の上では有利だが猟銃も持たず剣や即席の槍で熊鹿6匹を倒せるのだろうか?俺には狩猟の経験もないので解らない。
ただ解るのは今この場に流れている緊張感が狩る者ではなく狩られる者側の怯えた緊張感だということだった。
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