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見た目も性格も良い夕乃だが唯一の欠点は働こうとしない事だった。
「あれで仕事できれば完璧なキャリアウーマンってやつなんだろうな…秘書とかやっちゃったりして」
天は2物までは与えたが3物目は与えなかったようだ。
来るときに通った道を引き返し店へと戻る。
10分程走ると小さな町に入った。
ここが俺の生まれ育った町、最寄りの大きな町まで車で1時間はかかる僻地だ。
僻地と言ってもスーパーも郵便局もあるし生活には困らない。
ただ、遊ぶような場所は何もない。町の平均年齢は60歳と云う高齢化社会の見本のような町である。
そんな町にある『鈴木飯店』が俺の職場。
祖父が営む食堂の調理兼接客兼出前が俺の仕事だ。
「ただいま~」
暖簾をくぐり店内へと戻ると迎えてくれる祖父の声。
「おかえり、八宝菜定食上がり。3番さんだ」
俺はおかもちを置き八宝菜定食をテーブル席のお客さんに持っていき、再び店内の仕事に戻った。
◇◇◇◇◇
夕方、日の落ちる頃『鈴木飯店』の営業は終了する。それ以上開けていても地域性的にお客さんが入らないからだ。
つーか、常連さんしかお客さんがいないってのも寂しいもんだな。
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