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「一度彼に聞いたことがある。
すべての視力が無くなる瞬間、最後に見たいのは何?と」
「なんと答えたんですか?」
聞く私にママが黙って首を横にふる。
「答えてはもらえなかった。
その時はちょうど彼女と別れて落ち込んでた時だったしね」
ママはリビングに戻るとソファにどっかり座り込み頬杖をつく。
「今の彼にそれを聞いたら、一体どんな答えが返るのかしら。
もし、イクミと話す機会があるなら。
一度聞いてみるとよいわ」
私は布巾を持ったまま静かに頷いた。
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