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電光掲示板が、私の搭乗する飛行機の出発時刻を告げる。
少し早いけど、検問を通ろうかな。
私は荷物を持つと立ち上がり検問ゲートに向かおうとする。
その瞬間。
誰かが私の腕を掴んだ。
私は驚いて後ろを振り向く。
同時に包む温かな感触。
覚えのあるコロンがふわりと漂った。
「…本当に」
私を抱き締めたままその人が息を乱しながら呟く。
「本当に、サキちゃんは…ちゃんと別れを告げてから行きなよ。
ママがめちゃくちゃ心配したんだぞ」
やや怒ったようにそう告げたのは。
イクミ。
その人だった。
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