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「え…」
私は抱きしめられたままそれだけを言う。
「ママが連絡をくれた。急にいなくなったからって。
人に心配かけちゃダメじゃないか」
だきしめるイクミの顔は私の肩に埋められていて見えない。
でも、彼の体はかすかに汗ばんでいて整わない息がすべてを語っていた。
走って。
走って。
必死になって私を探しに来てくれた。
それが体から痛いほど伝わってきた。
「…ごめんなさい」
私は涙声になりながらそっとイクミの背中に手を回す。
そして彼の体を抱き締めた。
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