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くどいようだが、私の勘は良く当たる。悪い事ならその的中率は倍プッシュだ。
私は美咲の腕を引っ張り、さりげなく出入口に一番近い所に陣取った。
いつでも逃げ出せるように。陸上部に所属しているから、足の早さなら自信がある。
「し、しずかに……あ、す、すいません」
舞台上に現れた白い影。それは教頭に何事かを囁き、マイクを受け取ると口を開いた。
「はい、静かに!」
女性の声が、体育館中に響き渡る。見慣れない姿に不審がるが、生徒達は自然と口をつぐんだ。
すると彼女は満足げに微笑み、静かになった体育館をぐるりと見回した。
「賢い生徒さんばかりで、私はとても嬉しいです」
黒髪を後ろに束ねて、白衣を纏う彼女。その姿は、医者というよりも化学の先生を連想させる。
「ますば、自己紹介をしますね。私は春川愛、ある研究所で所長をしています」
はきはきとして、聞きやすい声だ。人前で話すことになれているのだろう。
「今回、この光学園は我が研究所の実験対象として選ばれました。おめでとうございます」
春風さんがそう言うと、舞台上に巨大な箱を乗せた台車が現れる。大きさは舞台の三分の一を占めるほどで、白衣を来た男性6人で押していたから、相当の重さだと思われる。
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