02 悪夢のはじまり

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 ……箱がガタガタと揺れているように見えるのは、ただの気のせいだろうか。 「開けて」  春風さんが白衣の男達に指示を出すと、彼等は箱を開き始めた。中には猛獣を入れるような頑丈な檻があり、周りは太い鎖と幾つもの南京錠で囲われている。  その檻の中に、ゆらゆらと見える黒い影。 それが“何”であるか、私は理解出来なかった。否、理解することを拒んだ。 「いやあああああ!」  最前列から悲鳴が上がる。 泣き出す生徒も現れるが、誰も逃げることが出来ない。黒服が出入口の前に立っているから。  ああ、やはりあれは―― 「ね、ねぇ、これドッキリかな……?」  美咲が、私の袖をひいて小声で尋ねた。周りの反応もそんな雰囲気だ、確かにここから見るとあれが人形のように見えなくもない。  檻へと視線を向ける。檻の中は満員電車のような状況だった。ぎゅうぎゅうに詰められ、見ているだけで息苦しい。 私はその中に見覚えがある顔を見つけ、指さした。 「あの、一番手前。松村先生だよ」 「え……」  白髪混じりの髪に、黒い縁の眼鏡。口をパクパクとさせながら、格子にしがみついている。あの眼鏡の形は古くて、今時松村先生くらいしか掛けていない。 「あ、本当だ。松村先生だね」 「うん。その隣は、神奈川先生。後ろは上田先生かな」 「じゃあ、あの中にいるのって……」  美咲が少し青ざめた顔をこちらに向ける。私の顔も同じように青ざめているのかもしれない。深い溜息をついて、私はゆっくりと頷いた。 「そう。あの中にいるのは、この学校の先生達だよ」
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