02 悪夢のはじまり

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   口を手で覆い、息をのむ美咲。人が物のように詰め込まれているのだ、中心部分にいる先生はかなり悲惨なことになっているだろう。 「はい、お静かに」  春風さんが声を張り上げて注意するが、パニックに陥っている生徒の耳には届かない。 彼女は大袈裟に溜息をついて、箱に歩み寄った。  パンッ、と耳に突き刺さるような大きな音が体育館に響く。 春風さんの手には黒光りする銃。そこから放たれた銃弾は、松村先生の喉を的確に貫いた。  皆が息をのむ。 確かに、銃弾は松村先生の喉を貫いたのだ。喉に出来た風穴から絶え間無く鮮血が滴り落ちているから、間違いない。  なのに、彼は傷を全く意に介さず先程までと同じように格子を揺らしているのは、何故。 「これが、私達の研究結果です」  静かになったことが嬉しいのか、春風さんはニコニコしながら言った。 「私達は長年、不老不死について研究を重ねて来ました」  彼女はそう言いながら、銃を白衣の内側に仕舞う。 それと入れかわるように白衣の男が銃を取り出し、松村先生に照準を合わせる。 「その過程で生まれたのがコレです。痛みを感じず、頭部が破壊されるまで動きます」  パンッ、パンッ、パンッと続けざまに三発。 それらは松村先生の額に命中し、先生はあっさりと崩れ落ちた。
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