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「生徒の皆さんに、見本を見せて上げて下さい」
「え……」
教頭先生の左右に、黒服の厳つい男が立つ。
そのまま腕を持ち上げられ、檻の前まで引きずるように連れていかれた。
捕われた宇宙人、だっただろうか?あの写真を連想させるような光景だ。少し滑稽ではあるが、笑えない。
檻の前まで来ると、教頭に気付いた先生達が寄ってくる。
カチカチと歯を鳴らし、口からはだらしなく唾液を垂らして。
松村先生は、もう食べ終わってしまったらしい。
「話が違うじゃないか! 私は殺さないという約束だったのに!」
「ああ、勿論殺しませんよ。貴方はウィルスに感染して、病気になるだけですから」
ぎゃあぎゃあと喚く教頭に、春風さんは微笑みと共に黒服に合図を出した。黒服は頷くと、教頭の袖を捲り上げて、檻の中に突っ込む。
「うわあああああ!」
檻の中に腕が入った瞬間、教頭の腕に幾つもの頭がかじりついた。
肉食動物ならともかく、人間に肉を切り取る鋭利な歯はついていない。よって、無理矢理噛みちぎるしかないのだが、それが余計に激しい痛みを生み出すようだった。
「ぎゃああああ! ひぎいいいい!」
黒服が手を離すと、直ぐに教頭は腕を引っ込めようとした。しかし、食らい付いた頭は離れない。
腕を振り、檻を蹴り、必死にもがいてなんとか檻の中から腕は取り出せたが、最早それは原形を留めていなかった。
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