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「あ、あああ……」
教頭はその腕を抱えて、地面に座り込む。まだ食い足りないのか、先生は檻を揺らして歯をカチカチと尚も鳴らせ続ける。
「うでが……わたしの……うで」
ごふっ、と、唐突に教頭の口から鮮血が溢れ出した。
無事な方の手で口をおさえるが、吐血は治まらない。呼吸さえままならないようで、喉を掻きむしりながら苦しみにのたうちまわる。それは、長く続いた。
……教頭の最期は、それまでに比べると少し呆気なく感じるものだった。
一際大きな血の塊を吐き出し、床に広がる血の海に倒れ込む。そして、ぴくりとも動かなくなった。
吐き出した血の量は尋常じゃない、失血死だろう。
「さあさあ、ここからがお楽しみですよ」
春風さんの弾んだ声が、スピーカーを通して響く。
先程からずっと感じていたことだが、これで確信した。
コイツ、狂ってる。
その時、教頭の体が大きく跳ねて、私は驚いた。あんな大量の血を吐き出して、生きているというのか?
私達はそれをただ静かに見守る。恐怖で言葉が出ないのかもしれないが。
教頭先生は私達の目の前でゆっくりと体を起こし、しっかり二本の足で立ち上がった。
口からは尚もボタボタと血が滴り落ちている。
教頭先生が顔を上げると、生徒達は息をのんだ。
口周りに血がべっとりとついているのは勿論だが、その土気色の顔や生気のない目。
それらは、後ろの檻に詰められた先生達と全く同じものだったのだ。
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