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銃声が響き、教頭先生は再び血の海に倒れ込む。額から新たに鮮血を垂れ流して。
「このように、コレらに噛まれると生者はコレになります」
春風さんはそう言いながら、教頭の死体を蹴り飛ばした。
舞台中央にあると邪魔だったのだろう。蹴り飛ばされた死体はごろごろと転がり、舞台から落ちる。生徒の悲鳴が聞こえた。
「コレは……そうですね、分かりやすく言うとゾンビのようなものです」
ゾンビ。映画や漫画の中でしか聞かない単語が、彼女の口から吐き出される。
納得は出来る。檻の中の異常な状況や、教頭先生が死に、生き返った訳もそれで説明がつく。
だが、それはあまりにも非現実的だった。ここは海外の研究所でも、廃墟でもない。日本にある普通の女子校だ。そんな物を見せられる意味が分からない。
「では、本題の皆さんに協力して頂きたい実験について説明しますね」
本題……そういえば、そんなことを冒頭で言っていたな。
実験内容については、もう薄々分かるような気がする。あの光景を見せられた後だから、勘が鋭くない人だって嫌な予感しかしないだろう。
「実験スタートの合図から5分後に、このゾンビをここから解放します」
眩暈がした。
美咲の手をしっかりと握って、何とか床に座り込むのを耐える。
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