02 悪夢のはじまり

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 アレはもはや人間と呼べるものじゃない。空腹のライオン、いや、それよりもっと獰猛で恐ろしい存在だ。 そんなものを解き放つなんて……。 「皆さんには、ゾンビにならずにこの学校の中で三日間を過ごして頂きます」  その言葉を聞いて、私の頭の中に、ふえ鬼という単語が浮かんだ。小学生の頃によくやっていた遊びだ。  ルールは鬼ごっことほとんど同じで、違うのはタッチされた者も鬼になるという点。 今、提案されたのはまさしくそのゲームだ。人間はゾンビから逃げ、追いつかれて噛まれた人はゾンビとなり、人間を追いかける。  それを、三日間も。無茶というか、不可能のように思えた。 時間が経てばゾンビは増える。増えれば当然、追われる側にとっては不利だ。 「しかし、皆さんはまだ若く、非力な少女です。なので、救済措置として校内のあらゆる所に武器と食糧を置きました」  どうか有効に活用してください、と微笑みながら言う彼女に暗い殺意がわきあがる。 そう思うなら、何故わざわざ女子高なんかを選んだんだ。ここでないといけない理由が、あるというのか。
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