63人が本棚に入れています
本棚に追加
私のそんな思いとは裏腹に、彼女は更に言葉を続ける。
「勿論、タダで実験に協力しろとは言いません。もし三日後貴方達が生き残っていたなら、その協力に感謝して――」
春風さんが指を鳴らすと、白衣の男が小さな台車を押して舞台中央にやってきた。
その台車の上には、ピラミッド状に積まれた札束。それを見た生徒達がどよめく。
「一億円、お渡しします」
不思議なことに、一億、という言葉は、ゾンビという単語以上に現実味がなかった。
一億、って一万円札が何枚必要なんだろ。
「……ねぇ、なんだか怖い顔してる人がいるよ」
美咲の言葉を聞き辺りを見回すと、少人数だが一億という金額に魅せられた生徒がいるようだった。
ほとんどはその話に半信半疑か、パニックを起こしてそれどころじゃないかだ。
しかし本当に一億円貰えるとしても、こんな実験からは辞退したい。命は金で買えないのだ。
大体、一億なんてとんでもない金額を言うくらいだ、向こうは誰も生き残らないと思っているのだろう。
そこまで思考を巡らせて、ふと気付く。
もし、仮に生き残ったとしても、一億なんて本当に渡すとは思えない。それどころか、口封じに殺される可能性すらあるのだ。
だとすると、私達は三日以内にこの学校から逃げなければならないのか……
最初のコメントを投稿しよう!