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体育館から正門まで行くには、グラウンドを突き抜けなければならない。
私は美咲を引っ張りながら、正門に向かって真っすぐ走っていた。熱い頬を撫でる風が、少し心地好い。
私の前に人はおらず、少し後ろに視線を向けると大勢の生徒がついて来ている。
……漫画でよくあるドドドドという効果音が、本当に聞こえるとは思わなかった。
そんなことを考えている間に、私達は正門が見える所まで来る。が、私はそこで愕然とした。
「なにこれ……」
門に幾重にも巻かれた鎖と、大量に付けられた南京錠。今朝ここを通った時には、こんな物はなかったのに。これでは、門を開けることが出来ない。
振り返ると、生徒の大群が近づいていた。もうすぐこちらにたどり着くだろう。
「ど、どうしよう……」
「裏門、行こう」
そっちなら開いているかもしれない、というと彼女は頷いた。私達は再び走り出す。
「特別棟の裏、回って行こう」
「う、うん……」
美咲は疲れているようだった。それはそうだろう、普段から部活で体力を作っている私と違って、彼女は帰宅部なのだ。
「待って!」
急に腕を引かれ、立ち止まる。振り返ると、美咲は正門を見ていた。私も同じく正門に視線を向ける。
正門の前は生徒でごった返し、悲鳴や怒声で溢れていた。デパートのバーゲンセールや、スーパーのタイムセールを連想させる様だ。
よく見ると、その中の数人が人を踏み台にして、正門をよじ登っている。緊急時とはいえ、無茶苦茶だ。
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