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被害者だったのか…
そう思ったら顔が自然と歪んだ
藤崎はそれ以上に苦しそうな顔をして、涙を堪えていたけど
「でも忘れられなかった……」
眼鏡を外して、滲んで来る涙を拭って俺を真っ直ぐ見る
「嫌だって言った時の顔が、武葉君に縋った時の声が、死ねば許してくれるのかって聞いた時の期待の目も全部っ」
だけどそう言葉を紡いで行く度涙がボロボロと零れていた…
悔しいんだと
辛かったんだと
そんな気持ちが全部詰め込まれた涙が…
「橘君はやってないんだって…気が付いた…気が付いたのに助けてあげられなかったっ」
唇を噛み締めて、手を強く握って悔しさをどこにぶつけて良いか解らないんだと伝わった
「そうしてる内に、今度は月兎君が現れて…みんな敵だって言う目と傷だらけの身体見たら怖くなった…」
小さくポツリと呟きながら溢れる涙をまた拭う
拭っても拭っても溢れる涙
そんなに真っ直ぐ感情を出せる藤崎が少し羨ましく感じた
「沢山傷付いてたのは心だけじゃないんだって解ったら、僕は今まで何してたんだろうって……」
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