感情

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「オレは既にいらない人格だった。」 「それは違うよ。」 猫達を見つめて力無く発した言葉に、山岸はすかさず否定した 見上げれば山岸は真っ直ぐオレを見ていた 「夜兎君は君を呼んだ、助けてと言った。」 その瞳から目を逸らす事が出来ずにいた 強い意志が感じられて逸らすなんて出来なかった 「生きる事を放棄しかけてる彼を救えるのは君だよ、誰よりも理解してるのも全部…月兎君だけなんだよ。」 オレは夜兎の一番近い存在だから当たり前だろ なのに理解しきれてなかったオレは… 「強気で勝ち気で、誰よりも夜兎君を愛してやまないのは月兎君なんだよ。」 そうだけど 解ってるけど だけど…っ 「そんな君が逃げてたら、誰が夜兎君を救えるの?」 「…っ」 そうだ… 夜兎に逃げるなと言ったのはオレだ 助けてやりたいと思ったのも 居場所を作ってやると思ったのも 愛してると… 側にいると言ったのは 全部オレなんだ 「……馬鹿だよな…本当に。」 弱気になったら 少しでも夜兎と同じ様に考えたら夜兎は消える 夜兎の性格と交わったら夜兎が オレを生み出した夜兎が     夜兎の人格が消えるんだ… 「見失っちゃいけないよな、“オレ”を。」  
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