夢現

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その言葉に手を伸ばすのを止めた 欲しいだと? 「俺はオレみたいに上手く生きられない。」 オレが上手く生きてるって? 「臆病者で、弱くて、誰かを護れない。」 オレは俺より上手く生きてなんていない… 誰かを傷付けて 誰かを護れてなんていない 俺すらも護れていない… 俺の為だけに産まれたオレは 唯一無二の君すらも 「俺よりきっと、楽しくて幸せな生活が出来る。」 「馬鹿にするなっ!!」 それ以上言うなっ オレが産まれた理由は一つだけなんだ 「オレは俺だけを護りたいっ」 幸せにしたい 笑ってほしい 友達と呼べる存在を作って 毎日をただ当たり前みたいに過ごしてほしいだけなんだ 「オレは俺の身体なんていらないっ!!オレはただお前に笑っててほしいだけなんだっ!!」 涙が出そうだった やっと会えた君の姿すらも揺らいでいた 「傷付けたけど…側にいられないけど…それでもオレは……幸せな空間を君に贈りたい……っ」 「…………。」 寂しそうな顔を浮かべて、夜兎は俯いた そんな夜兎に触れたくて 一人じゃないと教えたくて ただ無心に手を伸ばした 「夜兎…オレはお前が……」  
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