プロローグ

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でもそんな生活がまともになった それは義務だった学生から高校生へと昇格した時だった 俺が選んだ学校は今時珍しい男子校 勿論中学の顔見知りはいた だから相も変わらずな生活だろうと当たり前に思ってすらいた だが杞憂だったらしい 初めての友人が出来たのだ 名は武葉 進士 人の気持ちに敏感で気さくで優しい 明るくて和ませ上手で 何より情に深い奴だった 人見知りしない進士はたまたま隣だった俺に話し掛けて来た 「隣同士だなっ!!お前は何処の学校から来たん?」 そりゃ驚いた いや驚いたを通り越して意識すら停止した こんな風に悪意がない言葉は久しぶりで こんなにも当たり前みたいな会話は初めてで 言葉を忘れた俺はつい口を開いた 「……ヒュ…?」 漏れた空気に進士は驚いていた 少なからず俺も 今こんな風に話し掛けられるまで気付かなかった 「お前声…」 そう出し方を忘れたと思っていた俺は いつの間にか声を無くしていたんだと気づかされた 俺は何も困らないから特に気にしなかった だけど進士は 「ワリィ!!知らなかったとは言え無神経だった!!本当にごめんっ!!」 謝った…… これが進士との出逢い 俺の初の戸惑いと言う名の喜びだった  
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