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屋上に向かうと烏が沢山いた
俺は自然と身体が強張る
此方に気付いた1羽が鳴いた
『人間と居る。』
誠の事だとすぐ解る
俺はこいつらに人間と呼ばれた事がないからだ
カァカァと騒ぎ出す烏達に誠は少なからず驚いている
『また殴られる?』
『ヤト平気?』
『そいつ危ない奴?』
烏は頭が良い
俺達の雰囲気で敵か判断し難いのだろう
俺がいま強張ったのはこいつらで有って誠に対してじゃない
「平気、友達だから。」
『ヤト喋った!』
『久しぶりのヤトの声!』
『ヤト!ヤト!』
『もっと話そう!』
そう騒ぎ出す烏の言葉に俺は自分の口に手をあてた
確かに何年も口を聞いて無かったかもしれない…
「何騒いでるんだ…?」
あぁ…そうだよね、解るはずがない
絶対人前で口を開かなかったのに
今自然と言葉を紡いだ…
きっと油断とかじゃなくて
誠だから…
いつの間にか怖さを乗り越えられたのかもしれない…
誠の前なら大丈夫だと…
嫌われはしないんだと…
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