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ポタポタと滴り落ちる雫は赤く
雨の雫だけではなくなった
「溝鼠が、テメェ今まで何処に居たんだよ。」
顔を見れば投げた人物は弟
苛ついているのが見て取れる
「出てったんじゃ無かったわけ?」
騒ぎを聞きつけたかの様に母親が下りてきた
母までもが顔を歪ませ残念だと言いたげな表情をしていた
「閉じ込められてたんじゃない?こいつ昔から虐められてるみたいだし。」
クスクスと笑いながら風呂場から出てきたのは兄
「居場所なんざ無いの解ってんならさっさと死ねば良いんだ。」
ガシガシと拭かれたタオルを投げられ
割れた花瓶の破片を拾い上げる兄をただ呆然と見ていた
「なんなら……殺ってやろうか?」
本当に…?
「止めなさい、今後面倒なのは私達なんだから。」
小さな期待を母は消し去った
死ねるのかと希望的な何かは雑踏の中消え失せ
俺に当たり前の絶望が与えられた
「でも…今日は学校は休みなさい。」
小さな優しさ
いや違う
これは……
「お兄ちゃんに遊んでもらえば良いよ。」
「俺だけか?別に構わないけど、お前も混ざるんだろ…?」
些細な死なない死刑宣告
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