出会い、そして――

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両親が海外転勤。僕は親戚のいる家の近くに家を借りて一人暮らしを始めた。 朝、新しい学校への初登校。緩い坂を降り、交差点にさしかかった。すると・・・、ドンッ! トーストをくわえた同年代の女の子が走ってきて、ぶつかってしまった。 「いてて~、どこ見てあるいてんのよ!」 「なっ!おまえこそ交差点に走ってくるなんて危ないじゃないか!」 「とにかく私は急いでるの!遅刻遅刻~!」 「あっ!おい!財布、落としたぞ!おーい!」 女の子は走り去ってしまった。 どうしよう・・・、財布を警察に届けたいが、どこに行けばいいかもわからないし、僕も遅刻しそうだ。 とりあえず学校へ行って、帰りに届ければいいや。僕も学校へ急いだ。 遅刻ギリギリでセーフ。職員室へ行き、新しい担任の先生に挨拶した。若くて美人だ。 先生と一緒に教室へ行った。 「みなさん、転校生を紹介します。今日からみなさんのクラスメートになる、近藤君です。」 その時だった! 「あっ!ノロマ男!」 「あっ!トースト女!」 声をあげて立ち上がった女は、今朝交差点でぶつかったトースト女だった! 「あら、あなたたち、もう知り合いなの~?じゃ、近藤君はさやかさんの隣に座ってもらおうかしら。」 「ええ~っ!(二人)」 「なんであたしの隣があんたなのよっ!あんたのせいで財布なくしちゃったんだから!」 あっ。そうだった。僕は財布を取り出して彼女に渡した。 「あ・・・、拾っててくれたんだ・・・。あ、ありがとう・・・。はい、これ。あとで食べようと思ってたんだけど・・・。あんたが食べなさいよ。」 彼女はカバンからポッキーを取り出して僕にくれた。彼女は照れ屋なんだろう。これがせいいっぱいの感謝の表現なのだと思った。
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