嫌な予感

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「たっだいまー!」  誰に言うわけでもなくレイは部屋に入る。俺も靴を脱ぎ捨てレイに続いた。ここじゃ靴をそろえろ! などと注意する人はいない。  一人で暮らすには広すぎる3LDK。  元々、家族で住んでいたのだが、今のところはいない。  部屋にはインテリアなど皆無で部屋の中心に白いちゃぶ台と白いソファーが二つ寂しく置いてあるだけだ。  いち早くリビングについたレイはちゃぶ台をバンバン叩くジェスチャーをして俺に催促する。 「キョースケ! 早くたい焼き食べよ!」  どうやら心の準備もさせてくれないみたいだ。準備したとこで味は変わらないけど。  黙って床に座ると、後ろからレイがおぶさってきた。  俺はわずかな重量感を感じ、覚悟を決める。 「いくよ? ……そいやっ!」  う゛……。  いつやってもこの感覚は慣れない。痛みはないのだが他人が自分の体に入ってくる感触。自分という軸がぶれてしまいそうだ。  なんとも言えない衝動が数秒間続く。その間俺は目を瞑り、ひたすら耐えた。 『……もうっ! 何でキョースケは拒絶するのかなっ? 受け入れればなんともないのにっ』  頭の中で声が響く。少しうるさいくらいの音量。  レイだ。  どうやら憑依が完了したらしい。  憑依すれば、気持ちも大分楽になる。俺は座ったまま大きく伸びをした。
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