嫌な予感

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 目的地につくと騒がしかったレイも、ミルクを飲んだ赤ん坊のように静かになる。未だにあの人への恐怖心を拭えていない模様。  半分苦笑しながらドアにでかでかと張ってある木彫りの表札に目を向けた。 『儀式屋』  なんとも禍々しい書体で、見る人によっては解読不能となる。そして俺は読めない。  しかしこれで客がくるのだから不思議だ。一体どこでこの店を聞き付けたのか。しかもこの表札で。  先ほどとは打って変わるこのツンとした酸っぱい香り。それが路地裏特有の生ぬるい風に運ばれ俺の鼻に侵入してくる。  俺の胸中はさながらファミリーレストランのドリンクバー。  腐った匂いの原因はドアの横に捨ててある生ゴミだ。複数のハエが元気よくたかっている。袋は破け中身は散乱していた。  毎日のようにここに来るのは俺とこのハエだけかもしれん。ハエだってたまには休むだろうから俺だけか。  つか、ゴミ捨てとけって言ったのに……。  商店街で一般人はおろか不良さえ寄り付かない路地裏。  いくつもの亀裂が樹の根みたいに絡みあっている白い壁に、腐れかけた木製の扉が埋め込まれている。人が住んでいるのかどうかさえ危うい。  寄り付かないのも無理はないと思う。  いっそのことその存在ごと消えてしまえば……それは困るな。  俺は今にも取れそうなドアノブを握り、ドアを何度もつっかえながら開けた。
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