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「なんと今日は魔術関係だよ!」
右腕を天高らか振り上げ宣言するモナさんを俺とレイは冷めた目で見る。
奇怪な時計たちがあざ笑うかのように針を進めた。
「あれ? 反応が薄いね。魔術だよ? もっと驚いてくれないとつまらないじゃないか」
モナさんの言葉に思わず呆れてため息を漏らす。
まさに言葉もでない有り様だ。
「魔術って言っても……レイみたいなのがいるんだし、たいして驚きませんよ」
今さら。本当に今さらだ。
「いけないねえ。今の子供は無感動、無関心、無頓着だよ。それに魔術と霊術は似ているようで、全然違うんだよ」
悲観するモナさんはいつ見ても腹が立つ。かと言ってどうするわけでもないんだけど。
モナさんはそんな俺の心境を無視し、話を続けた。
「いいかい……っと言っても君みたいな子供に理解できる話じゃないしね。うん、無駄なことは避けよう」
自己完結に定評のあるモナさんは早々に切り上げようとする。
聞きたいこともあったので、止めたくもない背中を呼び止めた。
「モナさん、最近憑依したとき何か違和感を感じるんですけど大丈夫ですかね?」
霊術を使っているときは特にその違和感が酷い。頭が燃えるように疼いて、まぁ燃えたことないんだけど、つかそこは触れないで欲しい、ようはとにかく疼く。
モナさんは指をあごに当て少し思考する。
「心配し過ぎだよ。大丈夫なんじゃない?」
なにやらまた一人で納得したモナさんは「資料を取ってくるよ」と笑顔で言うと書斎の方へいってしまった。
部下の不安くらいきちんと聞いてほしいのは俺のわがままか。
棚に置かれているピンク色の液体が入った試験管の中身をコーヒーに入れる。
これくらいじゃ死なないだろ。
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