嫌な予感

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 試験管をアヒルの剥製に隠しミッションを終わらせると、レイがいきなり俺の頭をポカポカ叩きながら抗議した。 「キョースケ! 私まで吐きそうになったじゃん!」 「仕方ないだろ。モナさんがとっておきなんて言ったら嫌でもああなるっての」 「でもっ……」 「それに、レイは吐けないだろ」 「むっ」  これを言うとレイは何もいえなくなる。俺とレイは好きで一緒にいるわけではない。モナさんに無理やり『憑かされて』いるのだ。  そのせいか、俺の感情はそのままレイにも伝わる。まぁ、逆はないんだが。つまり、俺の考えてることがこのやかましいのに筒抜けってことだ。  そのせいでここ一年エロいことはあまり考えないようにしている。タンスにかくしたエロ本は可哀想に埃を被っているはずだ。 「そう言う問題じゃないよっ」  プンスカ怒ってるレイは全く恐くないが、たまに仕返しと言わんばかりに俺に憑依するのだから警戒は怠れない。 「わかった。わかった。たい焼き食わせてやるから、そう怒るな」 「……ニ個」  ニ個……か。  絶対胸焼けになる。俺の許容範囲は一尻尾だ。  しかし、ここは頷くのが得策だろう。誰も無益な争いは好まない。 「決まりだ。今回の依頼は絶対何かありそうだから、それにも耐えろよ?」 「はーっい! たい焼きにぃー個! にっこにこ!」  妙な歌を口ずさみながらレイは俺の周りを回り小躍りする。これが本物の人間だったら間違いなく床が割れているだろう。  そしていつも思うが、その踊りセンスねえな。
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