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二人は国語の授業を終えて食堂で休憩をしていたところだった。
橙真と絵里香の姿はない。
夏の日差しが窓から差し込む室内は、生徒たちの談笑で溢れていた。
「それよりニュース見た!? 水山賢がデキ婚だって」
人の話を聞いていないのか、彼女の話題はポンポンと変わっていく。
ネタに上がったのは、最近ドラマやCMで活躍している俳優だ。
「あいつ絶対シャブ中だよ!! なんかさ、ふにゃ〇ンっぽくない?」
「……ふにゃチ〇言うなよ」
とツッコミを入れながら、忍は周囲からの刺さるような視線を気にせずにはいられなかった。
なんと言うか、彼女の遠慮のない会話は心臓に悪い。
すでに彼女への印象は『最悪』に変わろうとしていた。
「お前さぁ、女らしくないってよく言われるだろ?」
人の事は言えないが、忍はわざと悪態をついた。
女子に女らしくないなんて言うのは初めてだが、さてどう切り返してくるだろうか。
少しだけ意地悪な思いで彼女を見ると、
彼女はふんっと不敵に笑ったのだ。
「そんなの関係ないじゃん。私は私でしょ」
「――――……」
その言葉は、なぜだか妙に自分の胸に残った。
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