第一章・互いの印象は

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  池内(いけうち) 佳奈(かな)。 おだんご頭がトレードマークで、カラオケとテレビドラマが大好きな高校2年生。 そんな彼女は、明るくて元気なのが取り柄だ。 初めて彼に出会ったのは、通い始めたばかりの予備校だった。 なんともありがちな出会いで、なんともありがちな恋の始まりだったと思う。 「月岡(つきおか) (しのぶ)です」 そう無愛想(ぶあいそう)に自己紹介をした彼を見て、ファッション誌から飛び出してきたのではないかと思ってしまった。 天使のようなあどけない面立ちに、繊細で柔らかそうな猫っ毛。 伸びた前髪からのぞかせる、ガラス細工のような琥珀色(こはくいろ)の瞳。 透き通るような肌は白く、二連のチョーカーをぶらさげた華奢(きゃしゃ)な首筋。 細長い指先には二つのシルバーリングが光っている。 その甘い容姿をくつがえすような、誰も寄せ付けない刺すような眼差し。 だけどどこか儚げな雰囲気をまとっていて、一瞬で目を奪われてしまった。 ただ、当時 佳奈にはつき合っている彼氏がいた。だからこそ想像もしてなかったのである。 まさかこの出会いが、恋に発展する事になるなんて。  
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