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『私立鳳蝶学園(シリツホウチョウガクエン)』の標識。ここから学園都市内だと云うことだ。バーコード式のパスで頑丈そうな門が開かれる。今日から、この学園に転校だ。
入口すぐにバス停。その先には、繁華街のような賑わいを見せる商店街。遠くに見えるのが校舎だろうか。だとしたら、高等部はとてつもなく遠い。
バス停に立つ。制服が無いという話だったので、着ているのは前の学校の制服だ。溜め息ひとつ。荷物は寮に送ってあるために軽い鞄を漁れば、出てくるのは学園資料と転入手続きの紙。
これから行く学校がどんな場所なのか、僕はよく知らない。全寮制男子校だということと、制服が無いこと、後は一度入学したら、卒業するまでは外に出ることが出来ないこと。そのぐらいしか聞いていない。
また退屈な毎日が始まるかと思うと、吐き気を伴う腹痛。僕は慢性胃炎持ちだ。
僕の名前――西東(ニシアズマ)、とは。
変な名前だと自分で思う。この名前が小さな頃からコンプレックスだった。からかわれては虐められて、本当に良い思い出がない。再び溜め息ひとつ。
程無くしてやって来たバスに乗り込む。空いている席に座って、すぐに流れていく景色。
卒業するまで出られないなんて、僕にとっては嬉しい話だ。両親には会いたくない。一度目を閉じて、再び開ければ先ほどとは違う世界。循環型らしきこのバスは、街を抜けて学校への道を進んでいく。
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