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まず。
でかい。そして高等部敷地内だというのに、校舎までが遠い。ちらほらと見える建物は何に使われているのだろうか。不安になって知らずに唇を噛み締めれば、降り立った場所から一歩、と踏み出す。
ここからも長い道程か。
そのうち、感覚的には大した距離も歩かぬ内に直ぐに建物の全景が見えてきた。ちらほらと見えた建物は、小屋の集まりのようだった。その中心に、目の前に見える校舎より一回りほど小さな建物。しかし、そこは可笑しなことにフェンスで大きく囲われていた。『立入禁止』の赤い文字。ここは学校では無いのか。一瞬頭を過るものの、眉を潜めるだけでその場所を通りすぎる。其処さえ横切ってしまえば、寮らしき建物と三棟に連なる、学校。
入口がやっと見えた。安堵の溜め息をつく。静かすぎる空気が苦手だ。しかし、授業中を考えれば当然かもしれない。そう言えば、時間の約束があってもいいものの、特に登校の指定もされていない。転入手続きの用紙の提出だけは言われているが、よく考えればおかしなことだ。
……心臓がドキドキしてきた。
見知らぬ場所だからか、静けさについ、聞き耳を立ててしまう。目の前には入口。入ってしまえばいいものを。足がすくむ。胃が痛い。
「………何やってんだか」
一言呟けば、冷静になる頭。よし、行こう。入れば意外に普通かもしれない。
足を進めた直後。
二階の窓ガラスが割れる音がした。
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