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「ちょ、ちょっ…待っ…!」
話し合いも無駄か、その人の目は既にイってる。斜め掛けの鞄の紐を握り締めて、その場から立ち去る準備。地理も不慣れな学園内で、何がどうなのか頭がついていかない。というよりも、何で僕がこんなことになっているんだ?
再び空を切る金属バッドに、そんな思考も吹き飛んだ。捕まったらヤバいのではないか。当たり前だ。大怪我じゃ済まない気がする。
身を翻して、来た道を戻る。誰か、誰か…、何でこんな災難。説明が欲しいくらいだ。
「待てよォオ!!追っかけっこかァ、アッヒャ!」
待てと言われて待てるか!
涙が出そうだ。溜め息も出そうだ。そんな暇が無いだけで。背後を振り返ることが出来ない。一心不乱に走るけれど、元々足は遅い。なのにつかず離れずなのは、この『追いかけっこ』を楽しんでいるからなのか。
辿り着いたのは小屋の建ち並ぶあの風景。立入禁止を跨ぐべきか否か。駄目だ、良心が痛む。そう思っている内に、恐らく距離は狭まっている。
決めなければ。
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