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「追っかけっこは終わりかァア?クーロネーコチャアン」
「…!」
背後に気配。勢い良く振り返る前に、きつく髪を引かれた。いた、痛い!
「…っつ…!!」
「…ァアア…?」
髪が抜けるのでは、後頭に掛けて強烈な力で引かれるそれに意志と反して涙が浮かぶ。やめろ、叫びたいところだけれど、唇は何も紡いじゃくれない。
転校初日に何でこんな目に?ふざけるな。思い切り怒鳴ろうとした瞬間、髪を引く力が弱まった。ただ髪を撫でるだけの指先、何がどうしたのか、全く検討もつかない。
拍子抜けして、唇を噛む。
「……キレーな髪ィ……まるで…」
先程とは一変した懐かしむような、柔らかい声だった。思わず目を丸くして、そっと背後を振り返る。獣の瞳は、既にそこには無い。面白いものを見つけたような、子供の目だ。驚きに言葉が出ずにそれを見つめるも一瞬、激しく揺れるフェンスの音で我に返った。
「はーい、そこまでだ。アンジー」
降り掛かった、穏やかな声。そちらへ視線を向けるとフェンスの上で器用にしゃがみ込んでいる人物。実に綺麗な顔をしていた。青みがかった黒髪と、赤の強い茶色の瞳が印象的な…。
アンジーと呼ばれた金髪の彼が、不意に金属バッドを振り上げる。僕は咄嗟に脇に避けた。しかし、そのバッドの先には…黒髪のその人が。危ないと、声が出ない。
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