8人が本棚に入れています
本棚に追加
「良かったな、アンジーって意外としつこいから」
満面の笑顔。笑い事じゃないような気がするが、お互いに怪我はない。というより、笑って済ませられるような事ではないだろう。色々突っ込みたいが、逆に疲れてしまいそうで、口に出来ず仕舞いだ。
「アレの対応に慣れてないってことは転校生?」
「……はい、まぁ…」
「ああ、そっか。じゃあ初めまして。俺はクロウ。本名は別にあるけど、そう呼んで」
「あ、えと、僕は…――」
随分と気さくな人だ。握手を求められたから、右手を重ねる。意外に大きい掌、思えば身長も…さっきのアンジー程ではないが、大きい。印象は日本人形に近い。オリエンタルな美形だ。
クロウさんの笑顔を見て、口ごもる。コンプレックスである名前。下の名前だけで良いだろうか?クロウさんも本名は名乗ってないのだし、構わないだろう。
「――アズマ、です」
「アズマね。宜しく」
案の定、クロウさんは変わらない笑顔で握手した掌を上下に振った。少なからず身構えていたために拍子抜けしそうになるが、軽く唇を噛み締めて抑える。
そっと柔らかく離された掌を下ろした後、クロウさんは穏やかな笑顔のまま、校舎に歩き出した。僕も自然と隣をついて歩く。
「その調子じゃあ何も知らないよな」
「……何も…?」
「この学校のこと。学園都市のこと」
「何か他と違うんですか?」
「……無知では長生き出来ねぇよ、アズマ」
口をつぐんでクロウさんを見る。クロウさんはやはり、笑顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!