シーン90:花の船

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花の船を見たのは、ボクもリカちゃんも、まだ5才の頃だった。 ボクとリカちゃんと、ボクのママとリカちゃんのママの4人で川沿いの道を歩いてたんだ。 そしたらリカちゃんが、 「あ、あれ」 って川を指さして、みんな川の方を見た。 そこには、ボクの両手をいっぱいに広げたぐらいの大きさの船があって、船から溢れるぐらい沢山のお花が飾ってあった。 リカちゃんがおばちゃんに、 「ねぇ、あの船どこ行くの?」 って聞いたらおばちゃんは、 「きっと海まで流れて行くのよ」 と言った。 リカちゃんは泣きそうな顔で、 「船、サメに食べられちゃうよ……」 と言った。 ボクは、あの船がどうしても海に行くとは思えなかった。 だって、船はとってもキレイだけど、だだっ広い海にはぜんぜん似合わないと思ったから。 だからボクは、 「あの船は海には行かないよ」 ってリカちゃんに言った。 「もっとキレイなところに行くんだ。絶対そうだよ」 ボクがそう言うと、リカちゃんはにっこり笑ったんだ。 月日は流れ、私と里香は結婚した。 私達は、子どもが両手をいっぱいに広げたぐらいの大きさの船を作り、溢れんばかりの花で飾った。 そして、船を川に流し、黙って2人寄り添った。 あの船が夢の国へ辿り着く信じて。
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