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花の船を見たのは、ボクもリカちゃんも、まだ5才の頃だった。
ボクとリカちゃんと、ボクのママとリカちゃんのママの4人で川沿いの道を歩いてたんだ。
そしたらリカちゃんが、
「あ、あれ」
って川を指さして、みんな川の方を見た。
そこには、ボクの両手をいっぱいに広げたぐらいの大きさの船があって、船から溢れるぐらい沢山のお花が飾ってあった。
リカちゃんがおばちゃんに、
「ねぇ、あの船どこ行くの?」
って聞いたらおばちゃんは、
「きっと海まで流れて行くのよ」
と言った。
リカちゃんは泣きそうな顔で、
「船、サメに食べられちゃうよ……」
と言った。
ボクは、あの船がどうしても海に行くとは思えなかった。
だって、船はとってもキレイだけど、だだっ広い海にはぜんぜん似合わないと思ったから。
だからボクは、
「あの船は海には行かないよ」
ってリカちゃんに言った。
「もっとキレイなところに行くんだ。絶対そうだよ」
ボクがそう言うと、リカちゃんはにっこり笑ったんだ。
月日は流れ、私と里香は結婚した。
私達は、子どもが両手をいっぱいに広げたぐらいの大きさの船を作り、溢れんばかりの花で飾った。
そして、船を川に流し、黙って2人寄り添った。
あの船が夢の国へ辿り着く信じて。
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