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「綺麗……です」
マスクの下で口裂け女? がにやけたような気がした。そしてマスクを――外した。
耳まで伸びる真っ赤な唇。噂通りの口裂け女だった。ヤバい、ちびりそうだ。
「これでも?」
口裂け女が言う。裂けた唇に目が釘付けになっていた俺は気付いた。普通の大きさの口は動いていたが、裂けている筈の口は動いていなかった。
「なあ……。それって口紅?」
「え? 嘘っ。何でばれたの? 係の人に絶対ばれないって言われてたのに……」
慌てて頬を擦る口裂け女。あーあ、そんなに擦ったら口紅がとれるじゃんか……。
「と、とにかく! あなたは殺されちゃって下さい!」
突然、少女の手にくの字型の物体が出現した。あれはまさか鎌? 少女がそれを振り上げる。街灯によりそれが妖しく光る――。
少女が持っていたのは鎌ではなく、ブーメランだった。少女も予想外だったらしく、振り上げた格好で唖然としていた。
お互いに気まずい空気。俺の恐怖は完全に消え去っていた。うーん、この子どうしよう?
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