298人が本棚に入れています
本棚に追加
怖がる憂眞を抱っこして、なるべく環境のいい場所を探す。
「ぉ、ここいいかも」
先ずは普通の患者室。
他の部屋と比べて見ても、埃っぽくなく、ベッドは丁度二つあった。
「…ウォーライン」
爽眞が憂眞を降ろし魔法を唱えると、部屋が水浸しになった。
勿論、ベッドのシーツまで。
「ファイジス」
すかさず爽眞が魔法を唱え、密室に太陽の光を降り注がせる。
すると直ぐにシーツや床は乾き、ある程度綺麗な部屋を造りあげた。
「んーっ、今日は疲れたな」
「うん……。ねね、爽眞…」
伸びをする爽眞の服の裾を掴み頷くと、不意に上目遣いで爽眞の名前を呼んだ。
「んー?どした?」
「僕…学校、嫌だ…」
ギュッと裾を掴む力を強めると、涙目になりながら言った。
爽眞は一瞬で悟った。
学校――つまり、人がたくさんいる場所を憂眞は怖がっていると言うことを。
爽眞はもう一度憂眞を抱き上げ、笑った。
「オレは憂眞の親友だろ?
憂眞の事を泣かせはしねぇよ」
め
その瞳には、どんな事をしてでも憂眞を守ると言う強い意志が込もっていた。
そう、例え【どんな事をしてでも】。
最初のコメントを投稿しよう!