潜む者

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入り口から広いホールに行きそこからエレベーターを使いたい所だがあいにく電気が無いため階段を使う。 2階に位置する生涯学習課の前で俺達は立ち止まる。 「さて、やるか」 オレの声が誰もいない役所内に響く。 俺達はリュックを机に置くと戦利品を並べる。 カップラーメンやら缶詰やらたくさんの保存食が並びその中から一つを選ぶ。 「今日は麺の玄人にするか」 「じゃあオレはペヤソグにしよう」 お互い晩飯を選び終えるとフロアの一角にあるキッチンに立つ。 ガスも勿論きていないから携帯用のガスコンロだ。 その隣にはバーベキューセットも置いてある。 ガスを節約するためだ。 大量に置いてある水の入ったペットボトルを手に取り鍋に入れコンロにセットする。 ガチャ。 「あれ?」 おかしい。 火が付かない。 ガチャ……ガチャ……。 「マジかよ、おい彰っガス切れちまった」 「おいマジかよ」 少し焦りを含めた口調で彰が言う。 「ちょっと取ってくるわ」 空腹に敵わずオレが言う。 「外もう暗えぞ、明日にしようぜ」 「腹減って耐えられねえよ」 「缶詰やらあんだろ」 「いやっオレは行くぞ」 なんか意地を張ってしまう。 「わーったよ、じゃあ上から懐中電灯で照らすからゾンビいたらすぐ戻れよ」 彰はちょっと怒っていたが空腹には勝てない。 グロックと懐中電灯を持ちオレは一階へ降りた。 ガスを大量に置いておくのは危ない、外に置こう。 今ばかりはそう言った自分が憎い。 一回は相変わらず暗い。 月明かりすら届かないここは懐中電灯なしでは歩くのもままならない。 まず正面玄関に破損がないかと懐中電灯を照らす。 次に裏口、窓と次々に照らしていく。 「破損箇所はなし、と」 とりあえずこれで侵入はないと言える。 今バリケードがないのは裏口のみとなっているため、裏口より外に出る。 『おーい、聞こえるか』 常備しているイヤホンから突然声が聞こえて心臓もろとも跳ね上がりそうになる。 大声で気付かれるよりはと無人のホームセンターから頂いたトライシーバーが役に立つ。
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