序章   『声』

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『そんなトコで突っ立って邪魔だって理解できないのかね、このバカ共は』 「──っ!?」 「どうしたの?」 突然顔が青ざめる鞠奈を楓が心配する。 「う、ううん。……なんでもない」 必死で取り繕うとするが、顔色が良くないのは明らかだ。 鞠奈はとにかくここから離れようとする。 しかしその前に食堂から昼食を終えたらしい生徒が大勢出てくる。 そして、また『聞こえた』。 『次は重野の数学かぁ。アイツ、キモいんだよなぁ』『クソッ、ウザいババァなんか死ね』『あーあ。孝幸全然貢いでくれないし。金出さないなら捨てちゃおっかな~』『コイツ友達の前ではいい子ぶりやがって。裏では四股かけてるくせに生意気なんだよ』 「──ひっ……!? 嫌ぁ!」 「ちょっと鞠奈、ホントに大丈夫なの!?」 唐突に鞠奈は頭を抱えて叫んだ。 顔色はさっきよりも悪化し、かなりの冷や汗が出ていた。 食堂から出てきた生徒も異変を察してこっちを見る。 その内一人が寄ってきた。 「大丈夫ですか? 保健室に連れていきましょうか?」 『うるさいな。周りの迷惑も考えろ発狂野郎が』 優しい言葉とは真逆の罵声の『声』が同時に聞こえてくる。
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