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「ヴィン・バンダル、前へ」 ヴィンと呼ばれた少年は、軽く深呼吸をしてから前へ踏み出した。 「ハ…ハイ!!」 短く固そうな黒い髪には白いメッシュが入っていて、少なからず注目を集める。それが一層、ヴィンを緊張させのだった。 やや大きな目が、緊張のせいかギラギラとしていた。 若干、お腹が痛くなってきた17才である。 グランドを区切って作られた試合場に入ると、四隅にいた者達が結界を張る。 この試合は、王の護衛を決める試合である。 実力のある者同士の戦いにおいて、強力な魔法が放たれるのは必定だった。 故に、被害を出さないように四人掛かりで魔方陣を組み、結界を張らなければならない。 結界の中で相手と二人きりになる。ヴィンは目を細め相手を観察するように見た。 見たところ一般兵。 手には大槍を持っている。 ヴィンよりも5才程年上。 筋肉質な体つき。 「リーチが厄介だな……」 ヴィンはそう呟くと、腰に携えた刀を抜き、魔力を流す。 刀に魔力を流すと、キーンとした音叉を叩いたような音が微かに鳴り響いた。
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