6人が本棚に入れています
本棚に追加
/48ページ
「ヴィン・バンダル、前へ」
ヴィンと呼ばれた少年は、軽く深呼吸をしてから前へ踏み出した。
「ハ…ハイ!!」
短く固そうな黒い髪には白いメッシュが入っていて、少なからず注目を集める。それが一層、ヴィンを緊張させのだった。
やや大きな目が、緊張のせいかギラギラとしていた。
若干、お腹が痛くなってきた17才である。
グランドを区切って作られた試合場に入ると、四隅にいた者達が結界を張る。
この試合は、王の護衛を決める試合である。
実力のある者同士の戦いにおいて、強力な魔法が放たれるのは必定だった。
故に、被害を出さないように四人掛かりで魔方陣を組み、結界を張らなければならない。
結界の中で相手と二人きりになる。ヴィンは目を細め相手を観察するように見た。
見たところ一般兵。
手には大槍を持っている。
ヴィンよりも5才程年上。
筋肉質な体つき。
「リーチが厄介だな……」
ヴィンはそう呟くと、腰に携えた刀を抜き、魔力を流す。
刀に魔力を流すと、キーンとした音叉を叩いたような音が微かに鳴り響いた。
最初のコメントを投稿しよう!