204人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
ふと、彼女の目元に視線が定まる。
目は真っ赤で、瞼はどう見ても腫れていた。
明らかに泣いた後だ。
そんな彼女を見ていると目尻が熱くなる。
意地を張ってる場合じゃない。
そう思って口を開こうとした矢先、彼女が動いた。
「はい」
ポケットから取り出されたものを差し出される。
それは長方形の白い紙。
そこに書かれていたのは、おそらく親に教えてもらって初めて書いたであろう『罰ゲーム』の文字。
けれど、初めて書いた漢字はやっぱり下手くそで、『罰』という字なんてバランスがぐちゃぐちゃだ。
何より、『ゲーム』の文字は彼女の目が物語っているもので滲んでいた。
「これ、負けたときにあけるんだよ」
彼女がその言葉を発すると同時に、話を終えた親4人が道路に出てくる。
おじさんは一度自宅に戻ると、車に乗って戻ってきた。
それに乗り込むおばさんと彼女。
待って!俺はまだ何も言ってない!
ゆっくりと動き出した車を追い掛けながら、俺は叫んだ。
「絶対に!絶対にまた会おう!」
すると車の後部座席の窓が開き、彼女が身を乗り出して大きく手を振る。
その表情は、いつもの笑顔だった。
最初のコメントを投稿しよう!